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日常2020.03.30

あの現象の名前

こんにちは、マーケティング部の松本です。
先日、会社で業務に関する話をしていた時に、ふと「Excel」という単語をど忘れしてしまいました。喉まで出かかっているのに、あと少しなのに思い出せない。とてももどかしい思いをした上、「普段一番使っているのに」と笑われてしまいました。お恥ずかしい。
時々起こるこの、「喉元まで出かかっているのに思い出せない」という現象。覚えのある方も多いかと思います。実はこの現象、名前があるとご存知でしたか?
今回はそういう意外と知られていない、日常で起こる現象の名前について少しご紹介が出来ればと思います。お付き合い頂けると幸いです。

舌先現象(Tip of the tongue phenomenon)

舌先現象とは心理学用語であり、英語の「Tip of the tongue phenomenon」の頭文字を取ってTOT現象とも呼ばれます。現象の内容としては「思い出そうとすることが喉まで出かかっているのに思い出せない」というもので、正しく冒頭でExcelを忘れた私に起こっていた現象ですね。
この舌先現象に陥る主な原因は未だ解明されていませんが、その発生については「直接アクセス理論(Direct Access Theory)」と「推論理論(Inferential Theory)」の二説が提唱されています。

直接アクセス理論(Direct Access Theory)

この理論によると、脳は記憶のサインを送れるくらいには憶えているのに、それを思い出すにはサインが弱すぎる場合に舌先現象が起きると考えます。記憶の存在は感じることができるのにその内容を思い出すことができずに、喉まで出掛かっているのに、という状態になるという理論ですね。そうなる理由については、次の三つの仮説があります。

  1. 1.阻害説
    記憶を回収する手がかりは実際の記憶の近くにあるものの、かといってすぐ側というわけでもないため、実際の言葉を思い出すことが出来ない。

  2. 2.不完全活性化説
    ターゲットとなる記憶が思い出されるくらいには活性化されていないが、その存在は感じることができる。

  3. 3.伝達欠陥説
    意味論的・音韻論的情報が保存され、思い出されるやり方はそれぞれ異なる。それゆえに記憶の意味論的(語学的)刺激によって音韻論的記憶を十分に活性化できないことがある。

推論理論(Inferential Theory)

この理論によると、記憶を思い出すために与えられた手がかりから、十分に推論できないときに舌先現象が起きると考えます。その理由について、こちらには二つの仮説があります。

  1. 1.手がかり親密性説
    私たちは特定の言語シグナルとの関係性を作っているが、あまり親しみのない手がかりだとそれを認識できず、情報を思い出しにくくなる。

  2. 2.アクセシビリティ・ヒューリスティック説
    強力な情報をたくさん持ちすぎていると記憶自体ではなく文脈ばかりが思い出されてしまうため、内容がわからない。

ここでの紹介はあくまでもざっくりとしたものですので、詳細については是非ご自身で調べてみて下さい。自分の身にも覚えがある現象の原理について調べると人間の脳や神経についての知識も得られますので、とても楽しいですよ。
ちなみにこの舌先現象の「舌先」という言葉は、フランス語の「avoir le mot sur le bout de la langue(舌の先端に言葉がある)」というフレーズからの翻訳借用なのだとか。心理学の用語にはフランス語が用いられる事が多いそうですので、その事についても今後は少し調べてみたいなと思います。

セルフ・ハンディキャッピング(Self-handicapping)

セルフ・ハンディキャッピングとは、自分にハンディキャップを課すことで、たとえ失敗した時でも他のせいであると言い訳ができるようにして自尊心を守る行為、また心理の事を指します。成功した時は、ハンディキャップがあったにも関わらず成功する事が出来た、と自分の評価をより高められるという、予防線を張る防御的な行為と言われています。文字で並べられてもいまいちピンと来ませんよね。ですが、このセルフ・ハンディキャッピングという現象は私たちにとても馴染み深いものなんです。このセルフ・ハンディキャッピングには大きく分けて、以下の二種類があります。

獲得的セルフ・ハンディキャッピング

この獲得的セルフ・ハンディキャッピングで良くあるのは、例えば大事な試験の前に突然部屋の掃除や整頓を始めてしまったり、ゲームをしたくなったり。最優先で取り組むべき期限付きの仕事や課題、作業の準備にわざわざ妨害になるようなことを始める事で自分にハンディキャップを課すような行為を指します。自分の能力に自信がないとき、成績が悪かった場合、本当はできるのに、ハンディキャップがあったからできなかったんだと言い訳するために行う、自己評価や自尊心を守る自己防衛的な心の仕組みです。

主張的セルフ・ハンディキャッピング

この主張的セルフ・ハンディキャッピングで分かりやすいのは、試験前に友人や周囲の人間に「勉強してない」「昨日はテレビを見て夜更かしした」「この教科苦手なんだ」などの予防的な発言をする事でしょうか。この場合は、失敗したときに周囲の評価を下げないよう、成功した時はより周囲の評価を高めるための事前工作として、周囲の人からの自分の心を防御するために起こります。

セルフ・ハンディキャッピングの例に挙げられる行動の多くには、能力の向上や生産的な価値はありません。失敗や成功の原因が自分の能力や努力ではなく、外部から与えられた要因にあるとすり替えて思いこむ行為だからです。とはいえ、今までそうやって来てしまった、と悩む必要はありません。これは人間の心理であり、ある意味で当然の行動だからです。
ですが、失敗も成功も自分の責任だと向き合う事は大切ですので、試験前に掃除をしたくなってしまった時にはその気持ちを振り払って、勉強に集中するのが一番ですね。

ジャネの法則(Janet' law)

ジャネの法則とは、主観的に記憶される年月の長さは年少者にはより長く、年長者にはより短く評価されるという現象を心理学的に説明したものです。簡単に言えば生涯のある時期における時間の心理的長さは、年齢の逆数に比例する(年齢に反比例する)という説ですね。
例えば30歳の人間にとって1年の長さは人生において1/30程ですが、10歳の人間にとって1年の長さは人生において1/10程です。果たしてこの時、30歳の人物と10歳の人物が感じる「1年」という時間の長さは等しいでしょうか。
この法則を科学的に証明する事は出来ません。ですが、時間の感覚は、その時間内にした新しい経験の量に関係しているらしい、ということは実験で確かめられているのだとか。いつかの未来で、この現象が科学的に証明される日も来るかもしれませんね。

幻想振動症候群(phantom vibration syndrome)

ポケットやカバンの中でスマートフォンが震えた気がして見てみたけれど、実際には何の通知も来ていなかった、という経験はありませんか?幻想振動症候群とはその現象、またはそうした錯覚をする心理状況や傾向を指す言葉です。
アメリカで行われた研究では、調査に参加した大学生の80%が幻想振動症候群の症状を一度は体験していることが判明したそうです。更には、1日に1回以上、頻繁に発生している場合は、スマホ依存症のサインかもしれないとのこと。
スマホ依存症とは、端的に言えば常にスマートフォンの通知などを気にかけて、画面をチェックしていないと不安になってしまう状態の事を指します。

2000年始めから半ばにかけて登場したSNSによって、インターネットを通じたコミュニケーションが爆発的に広がりました。当初はPCが主流でしたが、2000年代後半のスマートフォンの台頭によっていつでもどこでもリアルタイムで行えるものとなり、手元の端末には通話やメールの着信に加え、SNSなどからのプッシュ通知が頻繁に届くようにもなりました。
「誰かから連絡がきているかもしれない」「自分の書き込みに誰かが反応しているかもしれない」「返信が遅れたら相手に迷惑かもしれない」といった思いから、スマートフォンをついついチェックしてしまい、やがてチェックをしていないと不安になる「スマホ依存症」に発展してしまうことがあるとされています。

原因としては、このような「不安」から、衣服が擦れる際の振動といったあらゆる状況が、スマートフォンのバイブレーションだと脳が予想してしまうために起こるのではないか、と言われています。
あまり頻繁に幻想振動を感じるようであれば、一度スマートフォンから距離を置く必要があるかもしれませんね。

心理的リアクタンス(theory of psychological reactance)

他人から命令口調で「○○をしろ」「○○をしなさい」と言われた時、心理的な抵抗を覚えた経験はありませんか?人間は自由を制限されると激しく抵抗し、自由を回復しようとする、という理論を「心理的リアクタンス」と言います。リアクタンスとは英語の「reactance」で、「反発」という意味です。人間は誰しも、心理的な反発を胸のうちに抱えているんですね。
心理的リアクタンスに関して代表的なものは、下記の四つの心理効果になります。

カリギュラ効果

カリギュラ効果とは、あるものを禁止されればされる程、人間はそのものが気になってしまう、という心理効果の事を指します。名前の由来は1980年にアメリカとイタリアの合作として発表された「カリギュラ」という映画です。ローマ帝国の皇帝カリグラをモデルにした内容が過激であったためにボストン等の一部の地域で公開が禁止されましたが、そのことで逆に世間の注目を惹いてしまったのです。この事を例として、禁止されると逆に気になってしまう、という心理効果のことをカリギュラ効果と呼ぶようになったのです。

ブーメラン効果

ブーメラン効果とは、相手を説得すればするほど抵抗を受けてしまう心理現象のことを指します。「説得の逆効果」とも呼ばれ、人を説得するつもりがかえって相手の反発や抵抗を招いてしまうんですね。ブーメランは投げれば返って来るので良い意味なのかとも思いますが、戻って来たブーメランによって自分も傷ついてしまうという、皮肉のこもった名前になっています。
説得という行為には「こうして欲しい」「こうさせたい」という説得する側の気持ちがありますよね。それが伝わると、説得される側は「するかしないかを選択する自由」が奪われるように感じてしまい、反発を覚えてしまうのだとか。

ロミオとジュリエット効果

ロミオとジュリエット効果とは、主に恋愛などにおいて、障害があった方が逆にその障害を乗り越えて目的を達成しようとする気持ちが高まる心理現象を指します。名前の由来は勿論、かの有名なウィリアム・シェイクスピアのロミオとジュリエットです。
恋人同士の間に、親の反対等の何らかの障害が存在する事で、かえってそれが二人の気持ちを高めてしまう場合などが当てはまります。
駄目だと言われれば言われる程、阻まれるほど、「関係を続けるか続けないかを選択する自由」を奪われると感じ、心理的な反発を覚えてしまうわけですね。

希少性の原理

希少性の原理とは、簡単に言うと需要>供給、となる現象のことを指します。
数量限定、地域限定、期間限定など、入手される機会を限定されてしまうと、今手に入れないと損をするのではないか、という気持ちになりますよね。人間は基本的に損をしたくないという気持ちが強く、この損を回避したいという反発心が希少性の原理を生み出すのだとか。
「手に入れる自由」を奪われることで、逆に手に入れなくては、と心理的に反発してしまうのですね。

カクテルパーティー効果

周りがどれだけ騒がしくても自分の名前は聞き取れたり、隣にいる相手との会話は不思議と成立する、という経験はありませんか?これは「カクテルパーティー効果」と呼ばれる現象です。
たくさんの人がそれぞれに雑談しているなかでも自分に必要な事柄だけを選択して聞き取ったり、見たりする脳の働きによるもので、パーティーのざわざわとした騒音の中でも会話相手の声を判別できることから、この名前がついたと言われています。

何故このカクテルパーティー効果が起こるかというと、脳のパンクを防ぐためです。五感から得た情報をすべて等しく認識していたら、大変なことになってしまいますよね。街を歩いている時にすれ違う全員の話を聞き取ろうとしたり、目に映る全ての文字や情報を認識していたら、まともに歩く事も出来なくなってしまいます。人間の脳はそれを回避するため、必要そうな情報のみを得て他をシャットダウンしているのです。
ただ、どういう仕組みや原理で脳が情報の取捨選択をしているのかは未だ解明されていません。まだまだ人間の脳にも謎が多いと思うと、何だか不思議な気持ちになりますね。

ウェルテル効果(Werther effect)

ウェルテル効果とは、マスメディアの自殺報道の影響で世間の自殺率が上がる現象を指します。「ウェルテル」は、ゲーテ著の『若きウェルテルの悩み』に由来します。主人公であるウェルテルは最終的に自殺をしてしまうのですが、これに影響された若者達が彼と同じ方法で自殺した事象を起源とします。また、この事が原因でいくつかの国家でこの本は発売禁止処分となりました。ただし、小説などによるフィクションの自殺も「ウェルテル効果」を起こすか否かについては、未だに諸説があります。

1974年、社会学者のデイヴィッド・フィリップスがニューヨークタイムズの一面に掲載された自殺と、1947年から1967年までの全米の月間自殺統計を比較することで、報道の自殺率に対する影響を証明し、これをウェルテル効果と名付けました。フィリップスの調査は下記の通りであり、これらは報道が自殺率へ影響を与えることの証明とされました。

  • 自殺率は報道の後に上がり、その前には上がっていない。
  • 自殺が大きく報道されればされるほど自殺率が上がる。
  • 自殺の記事が手に入りやすい地域ほど自殺率が上がる。

日本におけるウェルテル効果に関しては、内閣府の経済社会総合研究所からも警察庁の自殺統計を用いた分析論文が出ていますので、興味のある方は是非調べてみてください。
(内閣府経済社会総合研究所 - 「著名人の自殺に関する報道が自殺者数に与える影響」)

シミュラクラ現象(Simulacra)

シミュラクラ現象とは、三つの点が集まったものを見ると人間の顔のように見える現象の事を指します。日本語では類像現象とも。
人間は他人や動物に出会った場合、敵味方を判断したり、相手の行動、感情などを予測したりする目的で本能的にまず、相手の目を見る習性があります。人や動物の目と口は逆三角形に配置されていることから、点や線などが逆三角形に配置されたものを見ると、脳はそれが顔だと判断してしまうのです。よくある例だと、天井の染みが人の顔に見える事がありますよね。同様に心霊写真と呼ばれる現象の多くが、これで説明できるとされています。

エメットの法則(Emmett's law)

課題や業務をつい後回しにして、当初見込んでいたよりも多く時間がかかってしまい、「あの時にやっておけば良かった」と思う事はありませんか?これを「エメットの法則」といい、「仕事を先延ばしにすることは、片付けることよりも倍の時間とエネルギーを要する」という内容で経営コンサルタントのリタ・エメット氏が2001年に『いまやろうと思ってたのに… かならず直る―そのグズな習慣(原題:The Procrastinator's Handbook)』という本で提唱した概念です。エメットの法則には、下記の二つがあります。

第1の法則:タスクへの不安はタスク実行より多くの時間とエネルギーを消耗する

エメットの法則によれば、課題を先延ばしにしたままだと、すぐにとりかかった場合に比べて多くの労力・時間を消耗してしまうのだとか。

例としてプレゼン用の資料を作成する場合を挙げてみます。作成の作業を先延ばしにしていると、当初思い描いていた完成イメージや図のアイデアなどを時間とともに忘れてしまいます。いざ作業を始めたときには、どんなスライドを作ろうとしていたのか思い出したり、どんな工程で作業を進めるか決め直したりなどの二度手間が生じてしまいますよね。 要するに、「作業に取りかかるなら、早いに越したことはない」というのが、エメットの第1法則です。

第2の法則:完璧主義こそが先送りグセの原因

エメットの法則における第2の法則は、「先送りの原因は完璧主義である」というものです。心当たりがある方も多いのではないでしょうか。他ならぬ私も、これを調べた時に思わずどきっとしてしまいました。

完璧主義の傾向がある人は、なるべく綿密なプランを立ててから作業に取りかかろうとします。プレゼン用の資料を作る時、「プレゼンの良い見せ方」「良い資料の作り方」など、事前準備として色々と調べているうちに時間が過ぎてしまった事はありませんか?
もちろん、作業の前にある程度のプランを立てるのは大事です。しかし、そのプランを「完璧な」ものにしたいと思うと、膨大な時間がかかってしまいますし、仮に立てたとしても、作業に入ったらいくつも変更点が出てくるでしょう。
エメットの法則では、準備段階では細かい点にこだわりすぎず、一刻も早く課題に着手することが重要だと主張しています。

まとめ

少々長くなってしまいましたが、今回は日常で起こり得る様々な現象について、名前や原因を簡単にご紹介しました。
いかがでしたでしょうか。私は心理学を専攻していた訳ではないので、詳しい方から見ると至らない部分も多いかと思いますが、ご容赦頂けると幸いです。

私が普段主業務として行っているWEBマーケティングでは、よく心理効果が用いられています。何となく、でも使う事は出来ますが、原理や理屈を知った上で上手く利用するのとは効果が大きく異なりますよね。それに、知らない事を知るというのはとても楽しいです。
これからも遅々とした歩みではありますが、心理学や心理効果について学び、マーケティングに関する見識を深めて行きたいと思います。

それでは、今回はここまで。
今後とも、MEプロモーションをよろしくお願いいたします。