背景画像
BLOG

ブログについて

日傘のすゝめ

2022.10.13

日常

サムネ画像

こんにちは、マーケティング部の松本です。
今年の夏も暑いですね。雨や曇りの日はともかく、よく晴れた日には少し外に出るだけで肌がびりびりと焼けるようで、日差しの強さを感じます。何だか年々暑くなっているような気がしますね。
そんな暑い夏のお供に非常に有用だったのが、日傘です。去年まではよほど暑く晴れた日で、なおかつ長時間日差しの中にいる予定がある時しか使わなかったのですが、今年からは外出時には常に持ち歩いて使うようになりました。というのも、日傘のあるなしで体感気温と快適さが大いに異なっていたからです。
そんな日傘ですが、いつから使われるようになったのでしょうか。今回は日傘はもちろん、雨傘も含めた傘の歴史について簡単にご紹介出来ればと思います。お付き合い頂けると幸いです。

傘の歴史

古い時代の傘、というと、日本人だと時代劇などに登場する和傘を想像する方も多いのではないでしょうか。実は傘の歴史は長く、起源は江戸の遥か昔、今から約4000年前にあったことが、エジプトやペルシャなどの彫刻画・壁画などから判明しています。この当時の傘は国王などの権威者が使っていて、用途としては日傘として用いられていたと考えられています。雨の時に傘をさす、という習慣は、歴史において随分と後の方に広まったものなのです。雨の日はただ雨に濡れる、ということが昔は当たり前だったわけですね。
国王などの権威者のみが使用していた傘が、もう少し一般的に贅沢品として使われ始めたのは古代ギリシャ時代です。アテナイの貴婦人たちが、日傘を従者に持たせて歩いている絵が残されています。こうしたことからも、当時の傘は暑い日差しを遮る目的とともに、権力を象徴する道具として用いられていたと考えられています。
雨傘としての傘の誕生は18世紀の後半とされていますので、想像していたよりもずっと近年になってからの物ということになります。

洋傘の歴史

現代の洋傘はボタンを押すだけで傘が開く「ジャンプ傘」「ワンタッチ傘」や、折りたたんでコンパクトに収納出来る「折りたたみ傘」など、使い勝手の良いものが多いですよね。ですが、起源となった遥か昔の傘はもちろん開閉式ではなく、天蓋のように頭上を覆う形のものでした。イメージとしては、ビーチパラソルが近いでしょうか。もちろん自分でさすものではなく、従者などがすぐそばで傘を支える必要がありました。それから徐々に、暑さを凌ぐための日傘として、時代とともに進化を遂げて行きます。
開閉式の日傘が登場したのは、13世紀のイタリアと言われています。当時の傘はフレームに鯨の骨や木が使われていたのだとか。その後、開閉式の日傘はスペイン、ポルトガル、フランスなどのヨーロッパに広まりました。
この頃も傘といえば当然のように日傘でした。比較的雨が多いイギリスにおいても、開閉式の日傘が開発されたのは18世紀頃ですが、雨が降ったときに傘をさすという習慣はなかったと言われています。雨の日に傘をさすと笑われた、なんて話も伝わっているくらいです。

そんな洋傘が日本に伝わったのは、日本洋傘振興協議会の資料によると江戸時代で、洋傘文化が広まったのは西欧文化が流れ込んできた明治時代であるとされています。はっきりと洋傘として特定できる最古の記録は、江戸後期の1804年、長崎に入港した中国からの唐船の舶載品目の中の「黄どんす傘一本」という記述です。また、天保年代(1830~1843年)に書かれたと見られる「崎陽雑話」という筆写本には、「蘭人の雨傘」という絵入りの記録があり、そこには、クジラのヒゲを骨として使っていたという珍しい傘の記録が残されています。
前述のように、洋傘について幾つか文献が残されているものの、長く鎖国が続いていたこともあり、日本国内で洋傘が普及することはありませんでした。普及のきっかけとなったのが、1853年(嘉永6年)のペリー浦賀来航です。翌1854年(安政元年)、日米和親条約締結のためにペリーが浦賀に再来しますが、この歴史的出来事にはかなりの野次馬が集まったそうです。そして、この時ペリーと一緒に上陸した上官たちが傘をさしていた姿を、多くの日本人が目にすることになったそうです。この出来事が、日本人の中に洋傘の存在を強く知らしめたと言えるでしょう。
洋傘の本格的な輸入が始まったのは1859年(安政6年)でしたが、当時は洋傘はとても高価なものでした。使用していたのは武家や医師、洋学者などの、やはり権威ある人間だったと言われています。
明治時代に入って西洋文化の広まりと共に洋傘も普及し始めました。明治元年(1868年)に刊行された「武江年表」という書物には、「庶民にも洋傘が普及し始めた」という記載があります。こうして文明開化の波とともに洋傘は一般的となり、鹿鳴館時代には国産の洋傘が誕生することになりました。

なお、洋傘のことを「こうもり傘」とも言いますが、その語源は傘を「かぶる」が「こうむる」となり、それが転じた、など諸説あります。その中でも、ペリーが来航したときの様子を「蝙蝠(こうもり)のように見ゆ」と比喩したことから生まれたという説が有力とされています。

和傘の歴史

では、日本における傘の歴史はどこからかというと、5世紀の後半〜6世紀にあたる古墳時代だと言われています。朝鮮半島から「蓋(きぬがさ)」という、絹を張った長柄の傘が伝来したと言われ、日本書紀のなかにも「蓋」の文字が記されています。
平安時代の末期に絵画化された「源氏物語絵巻」のなかにも和傘が描かれているほか、室町時代、職人の姿や職人同士の会話などが描かれた「七十一番職人歌合戦」には、傘張り職人の姿が描かれています。1594年(安土桃山時代)には、堺の商人・納屋助左衛門が現在の傘のような「ろくろ式」を持ち込み、豊臣秀吉に傘を献上した記録が残されています。ちなみに「ろくろ」は、開閉式傘の重要な部品で、傘の親骨を束ねる「上ろくろ」と、内側で受骨を束ね中棒(シャフト)をスライドする「下ろくろ」があります。元禄時代になると、傘の柄も短くなり、「蛇の目傘」が僧侶や医者たちに使われるようになったほか、歌舞伎の小道具としても使われるようになりました。
安政の時代、浮世絵師の歌川広重が江戸の暮らしぶりをとらえた代表作「名所江戸百景」には、夕立のなか傘をすぼめて急ぐ人の姿が描かれています。また、喜田川歌麿の美人画にも傘をさしている町人の姿が多く見られるなど、傘が江戸の人々の生活必需品であったことがうかがえます。

日本ではヨーロッパと異なり、雨の日に傘をさす、という習慣が早々に根付いていました。歴史を紐解くと鎌倉時代の絵巻物には、かぶり笠とさし傘の両方が描かれているようです。そして平安時代末期から鎌倉時代初期の「鳥獣戯画」には、蓮の葉の柄を持った動物が描かれています。これらからすでに鎌倉時代には、雨の日にはかぶり笠とさし傘が使用されていたと考えられています。
時を経て、江戸時代になると街に傘屋が看板を掲げるようになりました。丈夫な番傘とともに、柄などに華美な細工を施した漆塗りの高級な蛇の目傘も売られるようになったのです。番傘や蛇の目傘などは和傘と呼ばれ、江戸時代から明治、大正、昭和初期において、日本人にとっての雨の日の大切な日用品でした。ところが戦後になり洋傘が普及していくと、日用品としての和傘は姿を消していき、日傘として観光地での貸し出し用や、旅館のお出迎え、和菓子屋の店先などに使用される程度となっていきます。しかし、近年では日本の伝統文化として、また洋傘とは異なる独特の使い心地や見た目に惹かれて日常使いをする人も増えて来ていますね。

近年の日傘

現代において、手持ちの日傘を用いる習慣があるのは日本人ばかり、と言われています。19世紀にはフランスで流行した時期があったものの、その後流行は廃れ、ヨーロッパではあまり使われなくなったそうです。また、韓国では使われることがあっても年配者のものという認識が一般的でしたが、近年では若者の間に浸透しつつあると言われています。
日傘といえば女性、というイメージが強いかと思いますが、昨今は男性も熱中症予防やクールビズのアイテムの一つ、また、強い陽射しによる皮膚へのダメージを防ぐという点から愛好家が増えて来ていて、売り上げも年々伸びてきているそうです。
2011年7月に環境省が発表した『ヒートアイランド現象に対する適応策の効果の試算結果について』の中で「ストレスの観点からは男女問わず日傘を活用することが望ましい」「男性用日傘の商品開発・普及等も並行して進める必要があります」と公式に男性の日傘使用を推奨する文言がありました。また、2013年新語流行語大賞には「日傘男子」がノミネートされるなど、着実に男性の日傘使用は一般化して来ています。

日傘のメリット

涼しさ

なんといっても、日傘を使う最大のメリットは涼しさです。「日傘一つでそんなに暑さが変わるのか」と思われるかもしれませんが、実は暑い日ほど、日向と日陰には大きな温度差があるのです。直射日光が当たる箇所と、日陰になっている箇所では、酷暑の日では表面温度が20度も変わるという実験データも存在しています。
つまり、同じ気温の中でも、日向と日陰では体感気温が大きく変わるのです。いつでも日陰を作り出す事が出来る日傘は、熱中症対策にも非常に効果的です。

紫外線カット

日傘といえば女性が日焼けから肌を守るもの、というイメージがあるかもしれません。ですが、紫外線から身を守るというのは、男女問わず必要な事です。
紫外線による人体への悪影響として代表的なものは、日焼け、シミ、しわ、皮膚がん、白内障、免疫機能の低下などが挙げられます。日焼けは悪影響の中のたった一つでしかありません。皮膚がんに関しては、紫外線が遺伝子を傷つけたり、細胞を修復する機能を抑制するため、発がんの可能性が高まると言われています。目への影響も大きく、強い紫外線を浴びることによって角膜が炎症を起こす、紫外線角膜炎という病気もあります。雪山でゴーグルをせずに過ごすと、目が真っ赤に充血して痛くなったりすることがありますが、これが該当します。このように紫外線が人体へ与える悪影響は大きく、また、近年はフロンガスに依るオゾン層の破壊によって地上に到達する紫外線の量が増加していることも含めて、男女問わずしっかりと対策を行う必要があるのです。

晴雨兼用と雨晴兼用

前述した通り、近年では男女問わず日傘を使うようになり、それに伴って商品の種類も増えてきました。そんな中でよく聞くのが「晴雨兼用」の日傘です。不意の雨でも使える日傘、ということで、一本鞄に入れておくと安心出来る、素晴らしいものです。ただし、晴雨兼用とありますが、いざというときの小雨程度の急な雨にも使える日傘、という意味ですので、大雨や長時間の使用には不向きだということは覚えておかなくてはなりませんね。
逆に「雨晴兼用」という、雨傘をベースにして日傘のUVカット機能を持たせた種類もあります。どちらがメインの機能なのか、という点において大きな差がありますので、購入の際には目的に合った方を選ぶようにしましょう。

終わりに

いかがでしたでしょうか?今回は日傘からはじまり、傘の歴史について、簡単にご紹介させて頂きました。傘の歴史の始まりが日傘だった、というのは少々驚きましたね。
余談ですが、日本における傘の年間消費量は1億2千万本以上と言われていて、これは世界で一番の数字なのだとか。道理で日本人は世界で一番傘が好き、と言われるわけですね。

最近は本当に町中で日傘をさす人をよく見かけるようになりました。私の祖父も、素敵な日傘をさして出掛けています。熱中症の危険性が声高に叫ばれる中で、しっかり自分の身を守ってくれると、家族としても安心できてとても嬉しいです。
これまで日傘を使ったことがないという方も、是非一度、日傘を使ってみてはいかがでしょうか。きっとその涼しさに驚かれると思います。

それでは、今回はここまで。
今後もMEプロモーションをよろしくお願いいたします。