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AppleのITPについて

2020.12.08

マーケティング

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こんにちは、マーケティング部の松本です。
突然ではありますが、私は自分のスマートフォンとしてiPhoneを使用しています。先日、そのiPhoneにiOS14のアップデートが来ました。私はアップデートの内容と影響を確認してから実行したいタイプなので色々調べていたのですが、その中にAppleのITPに関するアップデートの情報もありました。折角なので今回は、ITPについて簡単にまとめさせて頂ければと思います。お付き合い頂けると幸いです。

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ITPとは

ITPとはIntelligent Tracking Preventionの略で、AppleがSafariに搭載しているトラッキング防止機能です。近年のインターネット広告のターゲティングに対するユーザーの嫌悪感や不信感の高まりを受け、ユーザーのプライバシーを守るために導入された機能です。
具体的な機能としては、Safariを使用しているユーザーに対するサイトトラッキングを制限するものです。広告のリターゲティングや購入経路の計測、ユーザーデータの蓄積を防止するため、ユーザーからすれば鬱陶しい広告が追い掛けて来なくて有難い限りですが、私たち広告運用者からすれば悩ましい機能ですよね。

サイトトラッキングとは

ではそのITPが制限するサイトトラッキングについて、改めて振り返ってみましょう。サイトトラッキングとは、簡単に言うとインターネット上でユーザーの行動を記録する事を指します。Cookieという、ユーザーがサイトを閲覧した際にサイトから付与されて閲覧データを保存する仕組みがあり、これによってインターネット上でどんなサイトをいつ、どのくらい閲覧したのか、何を購入したのか、どんな行動をしたのかなど、様々な情報を記録する事が出来ます。
このCookieには大きく分けて2種類あり、1つが1st party cookieという、ユーザーが訪れたサイトから発行されているcookieです。これはサイト内のユーザーの行動を記録し、サイト内で活用されるもので、例えば1度ログインをすると同じサイト内の別のページに移動してもログインが継続される事などに活用されています。もう1つが3rd party cookieというもので、これは訪れたサイトとは違う場所から発行されるcookieになります。例えばサイト訪問中にサイトに掲載されているバナー広告などが表示されると、そのバナー広告の元(Google広告など)からcookieが発行されて付与されます。この3rd party cookieを利用して、広告媒体はリターゲティング広告などを配信しています。

ITPの影響力

つまるところ、ITPの機能によってそれまで計測出来ていた広告の効果やオーディエンスデータ(行動履歴や興味関心など)の取得が難しくなり、広告運用において非常に重要となるターゲティングの難度も上がってしまいます。 ではその影響力はどの程度のものなのかというと、ITPはSafariに実装されている機能なので、影響の範囲はSafariを利用しているユーザーということになります。その数が少なければ影響も少ないと言えますが、実際のところのモバイル端末におけるブラウザのシェアは下記のようになっています。

上記のデータの通り、モバイル端末におけるSafariのシェアはおおよそ60%と、決して無視することの出来ない規模になっています。広告を配信する対象ユーザーの約60%へターゲティングが上手く働かないとなると広告配信の結果にも大きな影響が生まれるため、しっかりと対応しなくてはいけませんね。

ITPの進化

初めてITPが実装されたのは、2017年9月のことです。
ITP1.0では3rd party cookieの制限のみが実装され、過去を含めてサイト内で別のページへ移動していなければcookieが発行されてから24時間後に無効となり、また有効・無効問わずcookie自体が30日後に削除されました。
その約6ヶ月後、ITP1.1では1.0の制限が強化され、過去の訪問は関係なくなりました。
そしてまたその約6ヶ月後、ITP2.0にアップデートされ、大きな変更がありました。3rd party cookieはユーザーがサイトから直帰した場合は即時削除となり、サイト内で移動しないユーザーへのリターゲティングが実質不可能となりました。また、本来は広告トラッキングの為には用いられない1st party cookieも規制の対象となりました。当時、ITP1.1の環境下において、ITPの制限をかいくぐるためにリダイレクトを利用して3rd party cookieを1st party cookieに見せかけるという方法でトラッキングを行う広告媒体や計測ツールが多かったため、それに対するApple側の対応であるわけですね。それに加え、サイト解析のデータ集計時にトラッカー判定されたアクセスはリファラ表示をドメイン以降削除されるようになりました。
また、その6ヶ月後。ITP2.1へのアップデートによって、1st party cookieへの制限が強化されました。1st party cookieがJavaScriptを利用する場合、最大有効期限が7日に短縮され、またおおよそ1ヶ月半後のITP2.2へのアップデートでは最大有効期限が1日に短縮されました。

このようにITPはアップデートと進化を重ね、またそれに対する広告媒体や計測ツール側とのいたちごっこが始まりました。Googleが3rd party cookieによる計測を取りやめることを発表するなど、各広告媒体も対応を迫られています。

iOS14における変化

さて、では最新のアップデートであるiOS14ではサイトトラッキング制限にどのような変化があったのかというと、大きな影響としては下記の三点が挙げられます。

IDFAの利用の不可がデフォルトに

IDFAとは、Appleがユーザーの端末にランダムに割り当てている広告用の識別子のことです。これにより、同じ端末上では異なるアプリ間でも同じユーザーとして識別されます。このIDFAにはユーザーの年齢や性別などの属性の情報も含まれるのですが、このIDFAがデフォルトでは利用不可となり、ユーザーが自らの意思で「Appからのトラッキング要求を許可」という項目を可にしなくては利用出来なくなったのです。このことにより、アプリインストールキャンペーンの計測や、類似ユーザーのターゲティングの精度が下がり、それらを利用した広告の効果が大きく下がる事となります。

ITPにリダイレクトトラッキング対策が実装

ITPの進化に適応して、それをかいくぐるためにリダイレクトを利用した計測が普及していましたが、iOS14ではリダイレクトを行うとそれまでの計測機能が無効化されるようになりました。これにより、またサイトトラッキングや計測が難しくなったのです。

全てのブラウザ及びアプリ内WebViewにもITPが適用

これまでITPの対象となるのはSafariだけでしたが、iOS14からは、iOS14下で動作する全てのブラウザがITPの対象となるように変更されました。また、TwitterやLINEなどでリンクをタップして開かれるアプリ上のWebブラウザにもITPが適用されるようになり、ますます広告効果の計測やターゲティングが難しくなります。

終わりに

いかがでしたでしょうか。簡単ではありますが、ITPについてご紹介させて頂きました。ユーザーのプライバシーを守りたいAppleと、効果的な広告配信を行いたい広告媒体や計測ツールとの間でトラッキングについて一進一退の応酬が行われており、日々様々な更新が双方で行われています。特にITPについては情報の取得が遅れてしまうと、それに対応した広告媒体側の変更にも追いつくことが難しくなり、結果として広告配信の結果が悪化してしまう事となりかねません。
ITPに関わらず、Web関係の技術や情報は日々大きく変化していくものですので、今後も綿密な情報収集と対応を怠らないよう、心がけて行きたいと思います。

今後とも、MEプロモーションをよろしくお願いいたします。