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「認知の歪み」

2021.08.17

マーケティング

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こんにちは、マーケティング部の松本です。
以前、マーケティングに活かす心理学、というテーマで幾つかブログを書かせて頂きました。今回はその番外編として、「認知の歪み」について簡単にご紹介出来ればと思います。お付き合い頂けると幸いです。

認知の歪みとは

認知の歪みとは、誇張的で非合理的な思考パターンのことを指します。精神科医アーロン・ベックが概念の基礎を築き、弟子であるデビッド・D・バーンズが研究を引き継ぎました。1989年にデビッド・D・バーンズが著した「フィーリングGoodハンドブック」という本が最も有名であり、認知の歪みのパターンを学び、除去する方法が記されています。
認知の歪みは精神病理状態(抑うつや不安など)を永続化させる一因となり、また個人に現実を不正確に認識させネガティブな思考や感情を再強化させると言われています。

認知とは、物事の捉え方のことです。いま地球上で起きている「事実」は、全て人間を通して「認知」されたものです。
例えば、目の前にこんにゃくがあるとします。こんにゃくを食べた事があり、名前を知っている人間はそれを「こんにゃくがある」という事実として認知します。食べたことがあるけれど名前を知らない人間なら、「前に食べたアレがある」という事実として認知します。また、全く知らない人間なら、「灰色の板状のものがある」という事実として認知します。同じ光景や出来事に遭遇しても、得る事実はその人間の認知の仕方によって異なります。そのため、出来事の受け止め方は人間によって変わるのです。伴う感情、行動も、時として周囲とは異なって理解を得られなかったりするので、相互理解にも影響が出るのです。
この「認知」が歪むこと、本来あるべき形から変化することが「認知の歪み」です。同じ出来事に遭遇した際に、本来その人がするべき捉え方が歪んでしまうため、自分の気持ちが不安になったりイライラしたりと、ネガティブなものになることを指します。

認知の歪みの10パターン

デビッド・D・バーンズは、数多に存在する認知の歪みのパターンについて、代表的なものとして10パターンを挙げています。

全か無かの思考(オール・オア・ナッシング)

物事や人に、100%や完璧という事はありません。良いところもあり、悪いところもあるのが普通です。この「全か無かの思考」は、全ての物事を白か黒、0か100で判断してしまう思考パターンを指します。全体を通して見れば成功していることでも、その過程などにちょっとしたミスや失敗があると、全てが失敗した、と思ってしまうのです。
これが他者に向くと、ちょっとした発言や行動で相手の全てを「良い」「悪い」で判断する傾向となります。また自分に向くと、自身の行動に対する振り返りや評価において満足出来ることが少なくなり、更なる歪みへと繋がりがちです。

行き過ぎた一般化

経験や根拠が不十分なまま、早まった一般化を下してしまう思考パターンを指します。たった一度や二度起きたことでも、それがいつ、どんなシチュエーションにおいても起こる、という認識になり、「いつも」「絶対」「常に」「決して」という言葉をよく使う人に見られるパターンだと言われています。
例えば、一度行った時に行列が出来ていたお店に対して、「あのお店は常に混んでいる」と考えてしまう。1時間ずれれば、別の曜日なら空いているかもしれない、という思考に至らず、一度の例が全てと思ってしまう、という思考パターンです。

心のフィルター

選択的抽象化とも呼ばれ、物事全体のうち、悪い部分にのみ目が行ってしまい良い部分が思考から除外されてしまうことを指します。
友人ととても楽しい一日を過ごした最後の帰り道で水溜りを踏んでしまった、それだけでその日を「最悪な一日だった」と思ってしまう。その日にあった良いこと、楽しかったこと、その全てが、たった一つの悪いことによって見えなくなる思考パターンを、心のフィルター、またフィルタリング、などと呼びます。

マイナス思考

言葉の通り、全ての物事をネガティブに捉えてしまう思考パターンを指します。成功すれば「まぐれだ」と思い、失敗すれば「やっぱり失敗した」と思ってしまう。分かりやすい例を挙げると、テストで90点を取った時に「90点も取れた」ではなく「10点も取れなかった」と考えてしまうような思考です。
デビッド・D・バーンズによれば、認知障害の中でもこのマイナス思考が最もたちが悪い、とのこと。

結論の飛躍

結論の飛躍には、「心の読みすぎ」と「先読みの誤り」の二種類が存在します。

1.心の読みすぎ
他人の行動や非言語的コミュニケーションから、ネガティブな可能性を推測することを指します。当人に尋ねることなく、論理的に起こりうる最悪のケースを推測し、その予防措置を取ったりします。素っ気ない態度を取られたら「嫌われているに違いない」「影で悪口を言われている」などと思い、相手を避けたり周りに「嫌われている」と訴えたりするような思考を指します。実際は体調が悪かったかもしれない、疲れていて、後で謝ろうと思ってくれているかもしれない。勝手な判断で動く事により、仲が一層拗れてしまう可能性もあります。

2.先読みの誤り
上記に対して、こちらは物事に対する思考パターンです。物事が悪い結果をもたらすと推測することを指します。悲劇的な結論に一足先にジャンプし、空回ったり状況を悪化させる傾向があります。

拡大解釈、過小解釈

「針小棒大に言う」とも言われます。
失敗や弱み、悪い事に関しては過剰に拡大解釈をしたり、過大に受け取ったりします。その一方で成功や良い事に関しては実際よりも過小に受け取り、過小評価してしまいます。この思考パターンの場合、他人を評価する際は自身に対するものとは逆に良いところが大きく見え、欠点や失敗は些細なものに感じられる傾向があります。

感情の理由付け

単なる感情のみを根拠として、自分の考えや認識が正しいと結論を下す思考パターンを指します。ネガティブな感情は常々物事の真実を覆い隠し、その感情にリンクした考えの方を現実らしく経験させると言われています。「自分がそう感じるのなら、それが事実でなければならない」という考え方であり、例を挙げるのなら「この映画は面白くなかったから、この映画を評価している人はみんな嘘つきであるはずだ」という思考です。

〜すべき思考

自他に対し、対面している状況や状態を考慮する事なく、自身が正しいと思う通りに「〜するべきである」「しなければならない」と考え、期待する思考パターンを指します。
基準は一般に道徳的と呼ばれるルールを元にしたものであったり、自分の中で形成したルールであったり、様々です。心理療法家のMichael C. Grahamはこれを、「世界を現実と違った形に期待している」と呼びました。

レッテル貼り

たった一度起きたことや一部の性質によって、自分や他人にネガティブなレッテルを貼ってしまう思考パターンを指します。上記の「行き過ぎた一般化」のより深刻なケースとも言われます。
認知によって自他に対し誤った人物像を作り上げてしまうことで、たった一度のミスによって自分に対し「駄目な人間」とレッテルを貼ってしまう事などが代表的です。

誤った自己責任化

パーソナライゼーション、または自己関連付けとも呼ばれます。
自分でコントロールすることが出来ないような結果であっても、それを自分の個人的な責任として帰属させてしまう思考パターンを指します。これは称賛的なものもあれば、非難的なものも含みます。極端な例を挙げるのなら、「今日雨が降ったのは、私のせいだ」などでしょうか。
対義語として「被害者意識」があり、自分に起きたことの責任は全て他者にあると考えることを指します。

終わりに

ここまで認知の歪みについて、簡単に紹介させて頂きました。近年はSNSで話題にあがる事もあるため、ご存知の方も多かったのではないでしょうか。

「認知の歪み」は程度の違いはあれど、誰もが持っているものです。そしてそれは、必ずしも治さなければならないものではありません。それによって生きづらさを感じたり、苦しい思いをしている人が、その原因や解決策を導きやすくするための手段の一つと考えるべきです。
更に言えば近年では「認知の歪み」はもう古い、という考え方も増えて来ました。なぜなら、歪んでいない元の認知の状態を誰も明確に出来ないからです。だからこそ、人それぞれで異なる認知の仕方を「特性」や「個性」と考え、自分自身の「特性」に苦しむ人に対しては「歪みを矯正する」という対応ではなく、別の視点を共有することで認知の幅を広げる、という療法が主流になって来ています。

マーケティングに活用できる知識として、心理学について勉強をしています。活用するべき手法や知識、という面から調べていると、プラス方向に働くものばかりが出てきやすいものですよね。ですが、人の心には様々な要素があり、その一例として「認知の歪み」について今回は取り上げました。
良い面、ポジティブな要素だけではなく、気を配らなくてはならないこと、ネガティブな要素もあるということをしっかりと理解した上で、これからも学びを深めて行きたいと思います。

それでは、今回はここまで。
今後もMEプロモーションをよろしくお願いいたします。