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メタバース

2022.04.26

マーケティング

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こんにちは、マーケティング部の松本です。
2022年に入って、頻繁に「メタバース」という言葉を聞くようになりましたね。これまではぼんやりとしたイメージや認識でいましたが、近年の情勢から国内でもビジネスに活用する動きが活発化していて、マーケティングにおいても将来的に積極的な活用が必要とされると予想されています。
今回は話題の「メタバース」について、簡単にではありますが概要の紹介などを行えればと思います。お付き合い頂けると幸いです。

メタバースとは

メタバースとは、コンピュータやコンピュータネットワークの中に構築された、現実世界とは異なる3次元の仮想空間やそのサービスのことを指します。
日本における意味合いにおいては、基本的にバーチャル空間の一種で、企業や2021年以降新たに参入した人々が集まっている商業的な空間が主にそう呼ばれています。
将来的にインターネット環境が到達するであろうコンセプトで、利用者はオンライン上に構築された3DCGの仮想空間に世界中から思い思いのアバターと呼ばれる自分の分身で参加し、買い物やサービス内での商品の制作・販売といった経済活動を行なったり、そこをもう一つの「現実」として新たな生活を送ったりすることが想定されています。

メタバースの語源は、英語の「超=meta」と「宇宙=universe」を組み合わせた造語で、元々はSF作家のニール・スティーヴンスンが1992年に発表したサイバーパンク小説『スノウ・クラッシュ』に登場する架空の仮想空間サービスの名称でした。その後、テクノロジーの進化によって実際に様々な仮想空間サービスが登場すると、それらの総称や仮想空間自体の名称として主に英語圏で用いられるようになりました。
仮想空間の名称は日本にも元々複数有り、WIRED(つながっている場所)、バーチャル空間、VR(仮想現実空間)、サイバースペース(電脳空間)といったものが挙げられます。

メタバースの歴史

1997年にウルティマオンラインが世界で初めてMMORPGとして、メタバースの利用に商業的に成功しています。オンラインにおけるアバターを用いた活動とユーザー間の交流という考え方も、その後の様々なMMORPGをベースに普及してきました。それだけではなく、熱心なユーザーを中心としてゲームで活動した仲間と現実で出会うなど、仮想空間から実空間への社会的なフィードバックも起き始めていました。

世界で最初にメタバースが注目されたのは2000年代中盤からとされており、2006年頃に起こったメタバース的な仮想世界サービスの先駆けと言えるSecond Lifeのブームがきっかけでした。当時、ユーザー数が100万人を超えたばかりのSecond Lifeには米国の大手金融機関やコンピュータメーカーなどが参入し、3DCGで作られた仮想世界でアバターを使い、プロモーション活動や発表会などを開催していました。iPhoneもまだ世に出ていない当時、仮想世界に参加する手段はパソコンだけで、ユーザーはマウスとキーボードを駆使しながらアバターを操っていました。ただし、この当時はメタバースという言葉が知られておらず、MMORPGから派生したサービスとして認識されていたとされています。

2021年、世界的ソーシャルネットワーク企業であるFacebookが、業績悪化予測を受けてメタバース実現に向けて本格的に動き出したことで、「メタバース」という用語が業界で再浮上しました。2021年10月には、Facebookは社名を「Meta(メタ)」に変更すると発表しました。
同社はSNSを主軸に成長してきましたが、生みの親であるマーク・ザッカーバーグCEOは、以後は新たな社名のもと、「仮想空間の構築に注力し、数年内にSNSの企業からメタバースの企業へ変わる」と宣言しました。ザッカーバーグCEOは、2015年時点で「未来では常に装着していられるデバイスによってコミュニケーションは改善される」と語っていて、ユーザーはVRヘッドセットを使って「メタバースにテレポート」して、仮想世界の中でリアルなコミュニケーションをするのだと言っています。Facebookは2019年にVRワールド「Facebook Horizon」を発表すると、2021年7月にはメタバースを「次のコミュニケーションプラットフォーム」と位置付けて、10月に名称から企業名を廃して「Horizon Worlds」と改称してメタバースのプラットフォームとしました。VR空間についてはHorizonという名称で統一し、それまでOculusブランドで展開されてきたVRヘッドセットなどVR/AR分野のハードウェアについては、2022年初頭よりMetaブランドへの統合を行っていくとのことです。

それに対し、Googleからスピンアウトしたスタートアップ企業のNianticは、AR技術を使って現実の世界とデジタルの世界を融合させて、人々を直接結びつけるという没入型デジタル環境の仮想世界ではない「現実世界のメタバース」を提唱しました。Nianticの創業者兼CEOであるジョン・ハンケ氏は、2021年8月以降、VRヘッドセットに拘束されるようなメタバースを「ディストピアの悪夢」と呼んでいます。人気ARゲーム「ポケモンGO」などの開発を手掛けるNianticは、2021年11月にARアプリ開発者向けの開発キット「Lightship ARDK(Niantic Lightship AR Developer Kit)」を公開しました。これは 同社のARゲームの動作基盤となっているプラットフォーム「Niantic Lightship Platform」を他の開発者にも提供してARアプリ開発を後押しするというもので、デベロッパーはそれを利用して新たなプロジェクトを生み出すことができます。これには自力で開発するには相当な手間と労力が必要になる技術を公開することで、独立系の開発者がARを活用したアプリを作成することを容易にし、開発者を増やすことで、「現実世界のメタバース」というコンセプトを広めていくという狙いがあると考えられています。
また同社は、2千万ドル(約22億6500万円)規模のNiantic Venturesファンドを開設し、Nianticのビジョンに合致する企業に投資する事にしています。ローンチ時点で、すでにコーチェラ・フェスティバル、英国の歴史的王宮を管理する非営利組織Historic Royal Palaces、ユニバーサル・ピクチャーズ、全米プロゴルフ協会などのブランドと提携しました。

一方で、2010年代には広い意味での仮想空間としてのメタバースが「ファイナルファンタジーXIV」などのゲームをはじめ、既に生まれ始めています。オンラインゲームでは2020年時点で仮想世界的なものが複数存在していて、圧倒的な数のユーザーを集めていました。MinecraftやRobloxといった仮想空間を作れるゲームやXBOXを保有しているマイクロソフトも見逃せない存在であり、メタバースはネット大手企業による次の戦いの場となりつつあるのです。
Epic Gamesが運営するオンラインバトルロイヤルゲームの「フォートナイト」はVRゴーグルを使うタイプの仮想空間ではなく、ゲームがベースとなっています。しかし、アバターを使ったオンラインコンサートが実施されるなど、ゲーム以外の楽しみ方をするユーザーの数が年々増加し、2020年に実施されたトラヴィス・スコットのバーチャルコンサートでは、同時接続数1230万人という小さな国家の総人口並みの人数が参加しています。2021年までにソニーグループは、Epic Gamesに累計で少なくとも4億5000万ドルを投資しています。
日本で大人気となった任天堂のゲーム「あつまれ どうぶつの森」もまた、メタバースの一つとされています。累計販売本数は2021年時点で3200万を超えていて、JTBがユーザー制作マップ(JTB島)を公開するなど企業活用の模索もされています。
ゲームからのメタバースへのアプローチは、日本のゲーム企業にとっても重要な挑戦分野と言われており、日本におけるメタバース推進者の一人であるgumi創業者の国光宏尚は、「ソード・オブ・ガルガンチュア」などのVRゲームを手がけるThirdverseの代表取締役としてメタバース事業に注力することを宣言しました。また、GREEグループも子会社の「REALITY」が提供するアニメ調のアバターを使ったスマートフォン向けバーチャルライブ配信アプリを軸に、メタバース事業に注力することを宣言しました。

「メタバース」がこのまま普及していくのか、どのような方式が主流になるのか、インターネットのように様々な企業が作った空間が相互につながる形になるのか、インターネット以前のパソコン通信のように企業ごとに全く別の空間になるのか、現段階ではまだはっきりしていませんが、技術的問題として送受信データが膨大になると予想されています。現状ではそのような整った環境を所有している個人は少数派で、そもそも肉体的に長時間現在のVRヘッドセットをつけているのは難しいことから、一般への普及はかなりの遠くの未来になると考えられています。

メタバースの企業活用

今後メタバースが普及した場合、企業はどのように活用していくべきなのでしょうか。経済産業省の委託を受けて「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析」を行ったとある企業の報告書によれば、3つの活用例が想定されています。それは「生産性の向上」「新規事業」「マーケティング」です。

生産性の向上

VRヘッドセットを被り、病院での手術や火災現場での消火活動の疑似体験をして訓練を効率化したり、リモートワーク下での円滑なビジネスコミュニケーションに活用することで、生産性を向上させるイメージです。この分野は用途が明確で、近年の情勢から需要の高まっているオフィスワークの代替手段としてなど、BtoBの領域で粛々と広がっていく可能性が高いと言われています。

新規事業

既にゲームなどの領域で拡大しているアバターやデジタルアイテムの販売のイメージが強い活用方法です。加えて、仮想空間を活用したイベント事業なども含みます。ゲームのデジタルアイテムはもちろん、仮想空間の商業施設とも呼べる「バーチャルマーケット」では、セレクトショップのビームスや大丸松坂屋百貨店などが店舗を出店していて、デジタルアイテムの販売を既に実施しています。
例として、アメリカを中心に利用者が拡大しているオンラインゲームプラットフォームの「Roblox(ロブロックス)」があります。
利用者は、ロブロックス内で独自のゲームを作れたり、デジタルアイテムを制作して販売し、ゲーム内通貨を獲得することも可能です。ゲーム内通貨を現金化する方法もあり、ゲームから現実世界の経済が回り始めている代表的な例ですね。
2021年5月にはロブロックス内で、ラグジュアリーブランドの「グッチ」が「ディオニュソス」シリーズのバーチャルバッグを販売し、4115ドル(約51万6700円)で売れました。このバーチャルバッグは、昨今話題になっているNFT(非代替性トークン)アイテムでもなく、実際のバッグと交換できるオプションを付与されていたわけでもありません。ただアバターがわずかな時間身に着けられるバーチャルアイテムだったのにも関わらず、同シリーズのリアルの販売価格である3400ドル(約42万6900円)を大きく上回るという結果で話題となりました。

マーケティング

マーケティング分野での活用方法としては、デジタル空間での消費者との接点づくりやコミュニケーションの活性化が期待されています。上記のグッチのバーチャルバッグは大きな話題となりましたし、メタバース空間の企業活用は、消費者とのエンゲージメント向上につながるとされています。

メタバースを活用した4つのビジネスモデル

メタバースのビジネスモデルを分析した結果として、今後軸となると言われているのが「課金モデル」「広告モデル」「ECモデル」「仲介モデル」の4つです。

課金モデル

メタバース時代の課金ビジネスで注目するべきなのは、現実世界と同じく対象が無数にあることだと言われています。アバターやスキンだけではなく、例えば、仮想空間で遊んでいるときにバーチャルカフェを訪れた場合、バーチャルのコーヒーを“飲む”ために課金するといったことも想定されます。
また、音楽ライブや演劇などのオンライン化も進んでいて、バーチャル劇場で観覧する行為も課金要素となります。さらにソニーグループが、英国マンチェスター市に本拠地を置くサッカークラブ「マンチェスター・シティ・フットボール・クラブ」とのパートナーシップを締結した事例のように、スポーツのバーチャル観戦といったことも収益源として有力と言われています。
また、今後は旅行、美術館や博物館の観覧、遊園地などのアミューズメント体験など、リアルにおけるあらゆる体験がメタバース空間での課金コンテンツとして機能する可能性もあります。

広告モデル

広告は接する可能性がある人が多い、集客力のある場で機能するモデルです。そのため、まだメタバース黎明期ともいえる現状においては、課金モデルに比べるとメタバースでの成功事例はまだあまり目立ちません。
前述のロブロックスでは、既に米ナイキやグッチとコラボ企画を実施するなど、有名ブランドのタイアップ広告のような先行事例が出始めています。メタバースでは空間自体を自由に構築できるため、ブランドの世界観をより濃密に表現できると言われていて、利用企業にとってはマーケティングにおいて大きなメリットになると言われていています。
広告分野において、人目につきやすい広告掲載箇所は人気が高く、必要な価格も高騰しつつあります。メタバース空間という自由に構築できる広大な空間が一般化した場合、広告媒体や掲載箇所が大幅に増加する可能性が高まります。どれくらい先の事かは分かりませんが、これからメタバースが普及するにつれ、マーケティング形態も大きく変化していくと予想できます。

ECモデル

バーチャルアパレルが課金によって購入されるのに対して、リアルで着る服をバーチャル空間で購入するというショッピング形態も既に導入されています。その際には、リアルでの販売以上に販売員の接客技術が生かされるだろうと言われています。それを裏付けるように、メタバース空間では、バーチャル接客にチャレンジする動きが広がっているようです。
例えばビームスは、バーチャルマーケットにバーチャル店舗を出店して、実際に店舗スタッフがVRヘッドセットをかぶってメタバース上でリアルタイムに接客するという試みを実施しました。すると、見事に実在する商品の売上増加に繋がったとのことです。
また、大手百貨店の三越伊勢丹ホールディングスも、VRアプリ「REV WORLDS」に仮想の伊勢丹新宿店を出店して、スタイリストによるオンライン接客を実施しています。

仲介モデル

仲介モデルというと、メルカリのようなCtoCのサービスが、デジタルアイテムの領域にも広がるイメージです。実際にメルカリはNFT事業に参入して、バーチャルアイテムを含めたマーケットプレースの構築も視野に入れています。
また、デジタルアイテムの売買だけでなく、人と人、人と企業とのマッチングビジネスが広がる可能性も大きいとする見方もあります。バーチャル空間やバーチャルアイテムをつくれるクリエーターと、それが欲しい人や企業がその一例ですね。メタバース時代では、クリエーターエコノミーがより規模を増すと考えられていて、人材のマッチングも重要になると言われています。

メタバースとクリエイターエコノミー

メタバース世界は、動画配信や執筆、作品販売など、クリエーターが個人で収益を上げられる経済活動を指す「クリエーターエコノミー」がより色濃く出やすい世界です。前述したロブロックスでは利用者がクリエーターとなって、自由に仮想世界、ゲーム、アイテムをつくれることが人気の源泉になっています。
リアルでは巨大資本を持つデベロッパーしかつくれない都市や大型ビル、世界全体すら、仮想世界では誰でも生み出せるようになります。アバターに関しても、アパレルの知識や服飾の技術がなくても自由に作れます。既にアバターの販売で大きな収益を上げるクリエーターが現れているのが、今後のクリエイターエコノミーが盛り上がる傾向を示しています。
今後は一般ユーザーも企業も入り交じり、誰もがサービスや商品の提供側になる「総クリエーター時代」の到来もあり得るという説もあります。企業は知的財産権を管理しつつも、一定のルールの下でユーザーによる改変を許可したり、一部開放したりすることで、UGC(ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ)を生み出せる可能性が高くなっています。そうなると、消費者とのエンゲージメントも高まり、ユーザーと共に“世界”を作ってチャレンジしていくことが、メタバース時代の勝ち筋といえるかもしれません。

メタバースの今後

現在はプレーヤーがそれぞれ用意したプラットフォームや3次元サービスが点在して、ユーザーはそこで活動をしているのが一般的なメタバース空間です。
それによって競争が活性化して市場が急拡大している背景もありますが、プラットフォームやサービス間の相互運用性がないため、ユーザーは自身のアバターやデジタルアイテムを特定のサービスで限定的にしか利用出来ません。一部、アバターの共通ファイルフォーマットでつくったものを“持ち運べる”場合もありますが、多少の知識が必要で、利便性やサービス間の相互利用の面では課題があります。
そんな状況の中で、多様なメタバース、XR(現実世界と仮想世界の融合)サービスは今後、相互運用性を高めていくのが自然な流れと言えます。加えて、そもそも開放的で共有されるメタバースを想定した仕組みの開発も活発化していくと考えられます。

終わりに

近年の情勢から、仕事や社会の在り方は大きく変化しつつあります。オフィスワークをはじめとしたリアルでのコミュニケーションやワークスタイルから、オンラインツールを利用したインターネットを介したスタイルへ。バーチャルオフィスも徐々に広まりつつありますよね。
そうした流れから、今後もインターネット上、そして仮想空間でのコミュニケーションをいかにスムーズかつリアルと差異がないようにしていくか、という開発市場も盛り上がっており、メタバースの需要の高まりはますます加速していくと予想出来ます。
そうなった時、マーケティング市場も大きく変化していく事でしょう。もしかしたら今の知識や技術が全く通用しない、新たな世界がやってくるかもしれません。
未来を見通せる人が現れない限り、メタバースの普及がいつになるのかは分かりませんが、その新たな市場の最初の覇者になるための競争が世界中で始まっている今、私たちも無関心というわけにはいけません。
しっかりと情報収集をして、新たな時代にも積極的に臨む姿勢でありたいものですね。

それでは、今回はここまで。
今後ともMEプロモーションをよろしくお願いいたします。