背景画像
BLOG

ブログについて

マーケティングに活かす心理学
-part4-

2024.01.11

マーケティング

サムネ画像

こんにちは、マーケティング部の松本です。
マーケティングに活かす心理学シリーズ、part3で一旦終わりと申し上げましたが、あれからも少しずつ知見を深めていった結果、こうしてpart4を書かせていただくこととなりました。part3から随分と間が空いてしまいましたが、初回からpart3に関しては以下のリンクからご確認いただけますので、よろしければ是非。それでは今回もお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

マーケティングに活かす心理学
マーケティングに活かす心理学-part2-
マーケティングに活かす心理学-part3-

ユーザーの欲求を刺激する効果

ソーシャルプルーフ

まず初めに挙げさせていただくのがこちら、ソーシャルプルーフです。ソーシャルプルーフとは、英語では「Social Proof」、「社会的証明」と訳される事が多い、模範的な社会影響力という考え方のことです。
これは1980年代にアメリカの心理学者であるロバート・B・チャルディーニが提唱した心理学用語のひとつで、「人間は周囲の意見や社会的評価を参考にしながら自らの判断の妥当性を測っている」という心理傾向のことを指します。 噛み砕いて言うと、「自分よりも周囲の人の方が知識や経験があると考え、影響力のある人や多数派の評価を信頼して同調する」という心理的傾向のことです。
インターネットやSNSでユーザーが様々な情報を収集できる昨今、売り手側からの一方的なメッセージやプロモーションの信頼度は落ちていると言われています。皆さんもなにか商品を買うときは口コミのレビューを確認したり、SNSやインターネット上での評判を調べた経験があるのではないでしょうか。有名人が使っているという紹介が購入の後押しになったことは?行列の出来ている店を見て「きっと美味しいだろうから並んでみよう」と思ったことは?それがソーシャルプルーフの働きです。

これをマーケティングに活かす例を幾つか以下に記載してみます。

  • 既存のユーザー数や登録者数、購入数を示す(例:導入実績◯◯◯社以上!)
  • 商品やサービスの規模を示す(例:業界随一の導入数)
  • 購入者や導入企業のロゴなどを示す(例:俳優の◯◯も愛用)
  • 掲載されたメディアなどを示す(例:◯◯にも掲載されました)
  • 外部の統計情報を示す(例:ECサイト◯◯の人気ランキング1位)
  • アンケートの結果や口コミを示す(例:お客様の生の声を掲載)
  • ユーザーのリピート率を示す(例:リピート率99%!)

プライミング効果

プライミング効果とは、「あらかじめ受けた刺激によって、その後の判断や行動が影響を受ける効果・現象」を指します。これは無意識レベルで発生するものとされ、「前に」という意味の「プライム(prime)」から由来していると言われています。
分かりやすい例を挙げるのであれば、街中などで何処かから漂ってくるカレーの匂いを嗅いで夜ご飯をカレーにした経験はありませんか?もしくは、「ピザって10回言って」と言われて繰り返したあと、膝を示されて「ここは?」と聞かれて、思わず「ひじ」と言ってしまったことは?それがプライミング効果です。

プライミング効果には「直接プライミング効果」と「間接プライミング効果」があります。あらかじめ与えられる刺激を「プライム刺激」、影響を受ける事柄を「ターゲット」と呼ぶのですが、プライム刺激とターゲットが同一であるものを直接、別であるものを間接と言います。先に挙げた例では前者が直接、後者が間接ということになります。
なぜこんな効果が生まれるのかと言うと、人間の脳は何かを記憶するときに「関連し合うもの同士を網の目のように結びつける」機能があるからだと言われています。関連性の高いもの同士を近く結びつけるので、例えば丑は干支の一つで、「丑」と「干支」は近くに記憶されています。なので「丑」という字を見た時にパッと「干支の一つ」と思い浮かぶわけですね。しかしこれが「牛乳」だとどうでしょうか。「丑→干支」「丑→うし→牛→牛乳」と関連性が遠ざかり、「牛乳」と「干支」を一瞬で結びつけることはなかなかないのではないでしょうか。このように、プライム刺激の内容とターゲットを考えてこの効果を活かすとき、あまりその二つが遠いものだと意味が薄れてしまいます。
ですのでプライム効果をマーケティングに活かす場合、ターゲットを先に定め、そこからプライム刺激を繋げて考える必要があります。

ユーザーに好意を持たせる効果

アンダードッグ効果

アンダードッグ効果とは、「競争や対立の場面において、勝利の見込みが少ないとされる者やグループに同情してしまう心理現象」のことです。直訳すると「負け犬効果」。しかし日本語で「負け犬」は既に敗北しているニュアンスになり、「負けそう」という本来の意味合いとは少しずれてしまいますね。日本語でわかりやすく言うのなら「判官贔屓」。判官贔屓とは、人々が源義経に対して抱く、客観的な視点を欠いた同情や哀惜の心情のこと、とされています。それに因む形で、「弱い立場に置かれている者に対しては、あえて冷静に理非曲直を正そうとしないで同情を寄せてしまう」という心理現象を指す言葉として使われています。歴史には諸説あり、様々な考え方があるためここでの源義経についての言及は避けますが、「負け犬効果」では誤解を生みやすいとされ、日本語での言い換えは「判官贔屓効果」とされることが多くなっています。

スポーツの試合などで生じることの多いこの効果ですが、昨今はマーケティングでの活用事例もよく目にします。例えば「発注ミスで大量の在庫を抱えてしまったのでどうか買ってください」「こういう理由でたくさん売らなければ大変なことになってしまいます、助けてください」という文言です。同じものを同じ値段で売っていたとして、こういった文言のある店とない店、皆さんはどちらで購入しますか?もちろん、嘘を吐いてはいけません。しかし事実であるのなら、ありのままに弱者としての立場をユーザーに見せることでこの効果を活かし、より強い訴求としてアピールすることが可能です。ただし忘れてはならないのは、この効果はあくまでユーザーの良心や同情心、優しさに由来するものですので、それを搾取するような使い方をしてはならないということです。

類似性の法則

類似性の法則とは、自分と共通点のある相手や物事に親近感を持ち好感を抱きやすくなる心理効果のことです。これは1965年、アメリカの心理学者であるドン・バーンとネルソンにより提唱されました。この類似性の法則は「性別」「年齢」「学歴」「思想」「言動」など、さまざまな属性に対して働くと言われています。
この類似性の法則が働く理由を、ドン・バートンは合意的妥当化によるものとしています。合意的妥当化とは、「他者からの同意や他者との一致を正しさの証明と考える傾向」のことを指します。誰かと同じであることに安心する。属性やふるまいが違う人といると自分を否定された気になる。そんな心理傾向のことですね。
この効果をマーケティングに活かす場合、幾つかの手法が代表的です。

<購入・導入事例>
商品やサービスを導入・購入した事例を掲載し、その中に共感ポイントを含める手法です。例えば「こういう悩みがあった」「こういう目的があった」という事例を読むことで、ユーザーに「自分も同じだ」と思ってもらうのです。
<第三者の意見>
SNSやブログ、レビューでユーザーと同じ立場の人にプロモーションを行ってもらう手法です。ここで重要なのは有名人ではなく、ユーザーと同じ一般人であるという点です。皆さんもSNSなどで目にしたことがあるのではないでしょうか。「自分は◯◯歳の男性/女性でこんな風に悩んでいたのがこの商品/サービスで解決した」という投稿などが、まさしく類似性の法則を活かしたプロモーションです。投稿者と同じ年齢、性別、悩み事を持つユーザーは自然と共感し、その商品やサービスに興味を持つ可能性が高まります。売り手側からのアプローチであるサイトやLP上の事例・レビューよりも、実際の意見として捉えてもらいやすいというのも、第三者の意見の訴求が重宝される理由でもあります。
<仮想的を登場させる>
簡単に言うと、売り手側からユーザーに協調してみせる手法です。「あなたが◯◯に悩むのは□□□のせいです」というように、ユーザーの悩みに寄り添い、原因を仮想敵として示し、解決手法として商品やサービスをアピールします。ユーザーは売り手側から共感を示されることで自分との共通点を見出したり感じたりし、類似性の法則の働きによって好感度が上がりやすくなると言われています。

ユーザーの目を引くための効果

カラーバス効果

カラーバス効果とは、特定のことを意識し始めると、日常の中でその特定のことに関する情報が自然と目に留まる現象のことです。
人間は視覚や聴覚などの五感から得る情報を、無意識のうちに「自分に必要のあるものかどうか」で取捨選択していると言われています。なので特定のことを意識すると、それまでは「自分に必要ではない」と無意識のうちに捨てられていた情報が「必要だ」とされ、目に留まるようになるのです。例を挙げるのであれば、朝家を出る前に「今日のラッキーカラーは赤色です」という情報を得たとします。そうすると普段は気にも留めなかった街中の「赤色」に気づくようになる、という効果です。身に覚えがある方も多いのではないでしょうか。

マーケティングに活かす事例としては大きく分けて二種類あり、一つは「ユーザーが意識している情報を発信する」ことです。ユーザーが意識している、つまりよく目に留めるようになる情報を商品やサービスに絡めて発信することで、強くユーザーを惹き付けることができます。二つ目は、「商品やサービスに繋がる特定のことをユーザーに意識させる」ことです。こちらは多くの場合広告で活用されています。例えば特定のフレーズや色を意識させる広告を発信することで、ユーザーが普段の生活の中で自然とそのフレーズや色を意識するようになり、街中の看板や店舗に対してユーザーの目が留まるようになり、結果として商品やサービスの想起に繋がる可能性が高まります。

ユーザーの選択を促す効果

損失回避の法則

損失回避の法則とは、プロスペクト理論で提唱された人間の心理傾向の一つです。プロスペクト理論を細かく語るには確率加重変数や価値関数など色々と要素が増えすぎてしまうので簡潔に言いますと、「人は損失を回避する傾向があり、状況によってその判断が変わる」という意思決定に関する理論です。プロスペクト(Prospect)とは「見込み、展望、期待」という意味で、ここでは「確率的な意味合いでの期待」を指します。人は確率的に不確実な状況であっても「見込み」で期待値を歪めてしまい、客観的な事実だけで合理的な意志決定ができなくなる、と言われています。プロスペクト理論は行動経済学の理論のひとつで、心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって1979年に提唱され、行動経済学の基礎を築いたという理由で2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。
損失回避の法則は、人間は「手に入れる」ことよりも「損をする」ことを回避する方を選ぶ心理作用のことです。これを実証するにあたり、こんな実験がされました。

A:100万円が無条件で手に入る
B:コインを投げて表なら200万円全手に入るが、裏なら何も受け取れない

上記の二つの選択肢を提示したとき、期待値はどちらも100万円で同じですが、この場合ほとんどの人がAを選びます。しかし「あなたが200万円の負債がある場合、どちらを選びますか?」という条件を追加すると、大半の人がBを選択しました。
また、こんな実験もあります。

A. コイントスで表が出たら3万円もらえる。
B. コイントスで裏が出たら2万円支払う。
このコイントスゲームに参加しますか?

得るか失うか、確率は等しく1/2。また得る額と失う額では得る額の方が大きい。しかしこの実験では、参加しないことを選ぶ人が多数でした。

つまり、人は利益を得られる状況では「利益を逃すリスク」を「損」と捉えて損を回避します。損失を被っている状況では、確実な利益よりも損を回避する可能性がある方を。損得が分かれる状況では、利益を得ることより損を回避する方を。そういう選択をすることが以上の実験からは分かるとされています。
これをマーケティングに活かすには大きく分けて二つの手法があり、一つは「損失の恐怖を解消する」アプローチです。例を挙げるなら返金保証や無料試用期間を設けることで、損をする可能性が低いと思わせ、購入に対する意欲を上げる手法です。二つ目は「損失の恐怖を与える」アプローチで、こちらは期間限定セールやポイントの失効期限などが当てはまります。「セール中に買わなければ損をする」「せっかく貯まったポイントが失くなってしまうのはもったいない」と損をする恐怖を煽ることで、購買意欲を高める手法です。

終わりに

いかがでしたでしょうか。part4ということで、これまでにご紹介した心理効果とも繋がる部分のある内容が多かったかと思います。また、これまでの記事でも申し上げていることではありますが、私は決して心理学や統計学の専門家ではないので、その道の方がご覧になったら至らない箇所も多いかと思います。どうかご容赦いただけますと幸いです。
さて、これまでにご紹介した心理効果は普段身近にあり、私達も活用しているものが多くあります。しかしその中には、活用の度が過ぎるとユーザーを焦らせたり、恐怖を煽ることになるものも存在します。そのようなプロモーションは短期的な売上には繋がるかもしれませんが、続くとユーザーの負担が増し、長期的に見るとユーザーの信頼感を損なう結果に繋がる可能性も高くなります。適切に、適度に活用すること。それが何より大事だと、心理学について学ぶ中で感じました。いかに効果的に思える手法であっても、私達マーケッターが広告などを通して向き合っているのはユーザーというデータではなく、ひとりひとり違う人間であること。それを忘れずにこれからも努めて行きたいと思います。
それでは、今回はここまで。
今後ともMEプロモーションをよろしくお願いいたします。